自意識過剰な生活

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「黒笑小説」東野圭吾

以前「百夜行」を読んだわけですが、ネットで”白夜行3部作”なんて言われているのを見かけて、この本も読んでみた。この本は短編集になっていて、お目当ては「シンデレラ白夜行」。

 

黒笑小説 (集英社文庫)

黒笑小説 (集英社文庫)

 

 

個人的な感想を言えば、「シンデレラ白夜行」は別に「白夜行」と関係があるわけではなく、実はシンデレラが雪穂(白夜行の主人公)のように自分が望むようにすべてを計画的に進めていたら、みたいな話だった。

シンデレラの母は幼い頃に亡くなってしまい、貴族ながらに貧乏になってしまったシンデレラ。そんな父に、性格は悪いし外見も醜いしデブスな連れ子2人がいるが、高利貸しを営みお金だけは持っている女性と再婚を勧めたのはシンデレラ。夜な夜なバイトと称してドレスや高価なアクセサリーなどを修理しているお店で働いていると見せかけて、実はそれを身につけて舞踏会を荒らしまくっているのもシンデレラ。ついに王室での舞踏会の日に王子に見事見初められ、その日のために作っておいたガラスの靴をわざと置いていったシンデレラ。その後、無事に王子様が見つけてくれて結婚。継母の役目は終わったので父親と離婚させたシンデレラ。魔女が馬車やドレスを用意してくれたなんて口で言っているだけで、すべて自分の努力で得たのでしたってお話。

本当のシンデレラのお話よりもこっちの方が好きだし、小さい子にもこっちを教えた方が良いと思う。シンデレラストーリーを小さい頃に刷り込まれると、努力もしないのにきっと私にはいつか王子様が迎えにきてくれるんだわーっていう超受け身な大人になってしまいそう。

 

あとおもしろかったのは、出版社の編集者と作家たちの本音バトル。喉から手が出るほど賞が欲しいけど欲しくないと取り繕うベテラン作家と、どうせ無理だろうと思いながら受賞の連絡を作家と待つ編集者たちのやり取り。あとは、不作の年にうっかり新人賞を受賞してしまったばっかりにすっかり作家気取りで仕事を辞めてしまった男と、そんな男を敬遠する編集者とか。

東野圭吾も有名な賞を取るまでに下積みが長かったみたいな話を聞いたので、この辺は実体験や作家あるあるネタなのかななんて想像しておもしろかった。作家と出版社に限らず、普通の会社でもこのシチュエーションはあるあるだわ。