「BUTTER」柚木麻子_読み終わった後に高カロリーなものを食べたくなる作品
木嶋佳苗事件に興味を持ったときに買った本なのだが、半年くらいほったらかしにしてしまった。目に付くところに置いてあったのだが、やっと読むことに。
ちょっと重かったなあ、読み進めるのにすごく時間がかかって苦労した。
半分以上読み進めたところで持った素直な感想は、 ”木嶋佳苗事件そのまんまじゃん”。
以前読んだこの「毒婦」の内容のトレースかしらと。
”木嶋佳苗事件をモチーフにした小説”、というのを聞いて購入したので、てっきり同じように婚活サイトを通じて初老の男性を殺していく女性の視点で書かれた内容とか、逆に男性が主人公とかそういうものをイメージしていた。
ただ、いざ読んでみると、(若干違うのだが)かなり忠実に木嶋佳苗事件を記者目線で書いているように感じたのだが。。
これはこれで小説というのかな。
とはいえ、(木嶋佳苗がモデルになった)拘留中の梶井真奈子という女性に惹かれ、翻弄され、生活を浸食される女性記者と、梶井と関わり何かが変化した周りの女性たちのことが描かれていた。
その内容は、女性ならというか現代社会で生活する上で、誰もが感じたことがあることだとは思うけど、なかなかハードカバー1冊分描かれるのは重かったなあ。
とはいえ、途中で止められずに読み切りたいと思ったので、おもしろかったのだとは思うけれど。
いつもは大体ハードカバーは4時間くらいで読み終わるのだが、これは6時間くらいかかった気がするなあ。
この本で軸となる梶井という女性は、食に貪欲でまったくカロリーを気にせず、欲望に忠実に高カロリーな食事を楽しんでいた。
取材にきた食に興味のない女性記者に、まずバター醤油ごはんを進めていた。
炊きたてのホカホカごはんに、冷蔵庫から出したばかりの冷えているバター(しかも高級品のエシレバター)を乗せ、醤油をたらす。あわせて口に入れ、口の中でバターを溶かす。。壮絶に美味しいらしいよ。
あとは、たらこパスタにたっぷりバター。
そして、ラーメンにバターましまし。
そう、この梶井という女性は、バターが大好きなのだ。作中でいろんな繋がりがある。
その他にもロブションのコース料理、ブフ・ブルギニョン(牛肉の赤ワイン煮)、ウエストのバタークリームケーキなどたくさんの高カロリーな料理が出てきた。
その料理を味わう表現がとってもねっとりしていて官能小説を思わせる。梶井がその料理を食べた感想を伝えるときもエロさを醸し出していたし。
たしかに食欲と性欲は近いものがあると思うし、個人的にも食べている姿はエロいと思う。いつもそう思っているわけではないが、たまにそう感じることもある(相手のせいなのか、自分の状態なのか…)。
食と性は、本能的な行為という共通点があるからだろうか。
ということで、ずっと知ってはいたけれど食べたことがなかったエシレのバターを買ってみようと思う。
もちろんファーストエシレは、バター醤油ごはんにする予定。
主題とずれるけど、食に貪欲に、充分に満喫しようと思った。