「思い出トランプ」向田邦子 全編ともに日常の中の底冷えのする怖さを感じる
とある雑誌で、向田邦子さんの「思い出トランプ」は短編の教材になる名作と書いてあったのを見て、素直に従って読んでみた。
向田邦子さんの作品は初かな。小説家の前に脚本家としても有名な方だったようで、もしかしたらドラマは観たことがあるのかもしれない。
トランプと題するだけあって、13の短編集からなる本。
どれも見開き8ページくらい、1万字以下の短めの作品で、こいうのは読みやすくていい。
しかしどれも短いのにエピソードがたっぷり入っていて、しかもすべてが伏線になっているというか匂わせるような内容でギュギュっとしている感じがする。
さらにどれも、普通の家庭の普通の人の隠したい部分や気づきたくない部分を切り取っていて、ズシンと心に乗っかってくる気がして重い。。
ためしに、直木賞を受賞した作品のひとつ「かわうそ」を写してみた。
さらにエピソードもひとつずつ書き出してみたら、ものすごいぎっしり詰まっていた。
他の作品を同じように調べたことがないから比較できないけど、短編でもこんなに複雑に組み合わさっているんだということが分かった。
のんきに読むだけとは大違いで、作るのは大変だ。
短編集だから読み返すにはちょうどよいサイズ。
これはまた読んでみて、他の作品も写してみたい。
今年もたくさんの作品を読もう。