自意識過剰な生活

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「けむたい後輩」柚木麻子

ひさびさの小説。最近エッセイ本が多かったせいか、読む機会が減っていた。

私は柚木さんの本は「ランチのアッコちゃん」から入ったから、てっきり明るくて楽しい部分を作品にしている人だと思っていたんだけど、ナイルバーチとこの作品を読んで、あ違ったんだ、、と気づいた。

 

けむたい後輩 (幻冬舎文庫)

けむたい後輩 (幻冬舎文庫)

 

 

まあ作品ごとにメッセージがあってそれぞれ違うんだろうから、一概にこういう作風ですとは言えないだろうけど。

 

「けむたい後輩」はなんだかよく分からないけど、底冷えする怖さを感じた。どの人にも共感できる部分があるし、どの人ににも共感できない部分があって、それぞれの関係性も意味不明だし、こんな世界があるのかと想像したら怖かった。

 

 

主人公の真実子の栞子に対する盲目的な信仰心。幼い頃に感動した詩の書き手である栞子にどうしてそこまで忠誠心を誓えるのか不思議だった。その姿は誰にも理解してもらえないけれど、思い込みの強さがうらやましい。男性経験もないかと思いきや、実はあっさり経験済だったりと予想外の行動をする女性。でも栞子に出会ったことで、写真や料理、投資、脚本など、いろいろな才能が目覚めていったので、結果この子のひとり勝ちな気がした。

 

栞子は親の七光りに加え、中学生の頃に出版した詩でちやほやされたのが原因で、自分は特別だ・周りの子たちとは違う、という選民意識を持ってしまった可哀想な女性。そのまま大人になったらただのイタい子。中高の頃のみんなの憧れの先生と関係を持つも、今は禿げてしまい生徒からの人気はめっきり。それでも先生との関係に執着するが逃げられる。男性がいないとダメな女性で、その後もダメ男との関係を繰り返し、行く末はただのフリーター。

 

真実子の幼なじみの美里は、美人でアナウンサーを目指す頑張り屋。いわゆる意識高い系。その場の男性の視線を一気に集めるほどの美人ではあるが、男性経験がないらしい。その理由は男性への警戒心だけでなく、幼なじみの真実子への愛情もあるんだと思う。愛情とまではいかなくても、真実子の一番の親友は自分で、真実子のことを分かっているのも真実子が頼りにしているのも自分だという自信がある。そのため、栞子に強烈なライバル心を持つ。美人ゆえに男性からも女性からも攻撃の対象になり得るから大変そうだ。

 

 

メインはこの3人。なんだかとにかく怖いわーって思った。女子大が舞台で、女性しか出てこないからかな。男友達は出てこなくて、男性だと誰かの彼氏とかそんな立場の人たちばかり。女性同士の複雑な人間関係が織りなす怖い世界。。

 

ずっと真実子の忠誠心が意味不明だったけど、最後の最後に栞子にガツンと言ってやって、やっとスッキリした。でもその理由もよく分からなかったけど。

 

ナイルバーチの方がまさにホラーで怖すぎるけど、この「けむたい後輩」は現実世界っぽいというかリアルな怖さだった。

柚木さん、すごいなあ。怖いなあ。

 

 

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