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「ルビンの壺が割れた」宿野かほる 好きなジャンルだけどオチなかった

最近の読書習慣としては、毎日少しずつ読み進めるようにしていたんだけど、これは短かったので一気読みしてみた。

一時間くらいで読めたし、最後にオチがあるタイプなのでなるべくまとめて読んだ方が良い。

※ネタバレあり 

 

「ルビンの壺が割れた」

 

 

 

SNSで話題になったらしいが、最近は全然見ないので読む前に何で話題になったのか調べてみた。

どうやら発売前に全文無料公開して、キャッチコピーを募集したらしい。

これじゃなかったらあれだけど、まあちょっと変わったキャンペーンを展開したらしい。

 

何で知ったのか忘れちゃったけど、ミステリーというか最後にオチがあることだけは知った上で読み始めた。

往復書簡の形で、男女二人のやり取りで展開していく物語。

往復書簡はこれまでに湊かなえとか坂元裕二の本で読んだことがあるけど、この方式で物語を作っていくのは難しいだろうなと思う。

当事者目線の話をお互いにしていくだけだから。

どのタイミングでどの情報を出していくのかが難しそう。

でもこの形をとる場合、お互いに何か秘密があったり関係性が不明な時とかにものすごい効果があるのかも。

読み手は、やり取りを進めていくと徐々に真実が見えてきて、あっとする。

だから最初はじれったいというか、背景が分からないからつまらなく感じるんだけどね。

 

この「ルビンの壺が割れた」はまさにそう。

男性がfacebookで女性にメッセージを送るところから始まる。

 

facebookで友達の友達まで調べてメッセージを送っていたので、男性がストーカーなのかと思っていた。

しかしやり取りが進むと、二人は同じ大学で付き合っていたこと、結婚準備もしていたことなどが分かってくる。

女性が結婚式当日に現れずに、二人はそれっきり。

これは約三十年ぶりのやり取りだったようだ。

二年くらい女性は返信していなかったようだが、男性が癌を患っているなど数回メッセージを送ってやっと返信する。

すると、女性側がずいぶんと悪女に見えてくる。

男性は実は当時から、女性がソープで働いていたことや周りの男性たちもその店に通って関係を持っていたことを知っていたと暴露してくる。

うーん、男性はそれでも女性と結婚しようとしていて、好きだったのかな。女性側の結婚式当日ドタキャンの方が問題あるよなあ。

でも最後のやり取りで、あーなるほどね。やっぱり男性側がクソだったと分かる。

だからやけに住所やフルネームを知りたがっていたのか、と。

癌っていうのも嘘なんじゃない?と思ったね。

 

けっこうオーソドックスな展開だと思った。

でも二人の間の不穏な空気感は伝わってきて、これは何かある…!と最初から分かる感じがおもしろい。

ただやっぱり半分くらいまではおもしろくないというか、まだお互いボロを出さないような状況のため、展開がゆっくりに感じたかも。

 

最後の女性からのメッセージでスッキリしたけど、幼女趣味っていうのは突然出てきた気がしてしっくりこなかった。

それ以前に伏線とか匂わせている部分あったかな。気付かなかったなあ。

二人の学生時代にはいろいろな事件がありすぎて目くらましをくらっていた感覚になる。

ソープ嬢とか許嫁とか、他にも演劇部のスポンサー登場とその支援金持ち出し事件、あとはこの女性が演劇部のヒロイン役獲得のために本当に故意にライバルを蹴落としたのか、とか。

女性側もずいぶん癖強めだなと思っていたんだけど、ヤバい奴度でいったら男性側が圧勝。

だから三十年ぶりなのね。

 

しかしそれだけ長い期間、復讐心を保ち続けるってすごくない?

お前さえいなければ俺の人生幸せになっていたんだ、の恨みの強さよ。

たしかに通報したのはこの女性だけど、捕まった原因にこの女性は全く関係ない。

それでも、女性に対する不信感を与えられたってことで、この女性を恨み続けるってもうどうかしてる。

二十代から五十代まで恨み続けるんだよ。

ゾッとするね。